僕は個人事業主として音楽をやっており、請け負った楽曲を制作したり、アーティストのバックバンドなどの仕事をしています。
わかりやすくいうと、僕の”顧客“は”自分自身のファン“ではなく”アーティスト“様です。
アーティスト(歌手・アイドル・俳優etc…)がよりよく見える、聴こえる、売れるようにするのが我々の仕事であり、使命です。
事業として音楽をやっていると、それ以外にも色々なタスクが発生します。そこで起こりうる事故やトラブルについて話したいと思います。
私自身は安定供給できる興行職人である。
作るものはアートではあるのですが、あくまで仕事としてやっているので、締め切り(スケジュール)、クオリティを安定したものを供給できないといけないので、ある意味「興行職人」とでも言った方が良いでしょうか。アーティスト様、クライアント様から安心して頼めると思ってもらえないと話になりません。
このような考えを持っているので、真ん中に立ち、人前でパフォーマンスするのは僕に向いていないと思います。
対してアーティストは不安定(であって良い)
対してアーティストたるものが、予定調和で安定した物を作っても面白く無いですよね。
いくら時間がかかっても、精神が不安定でも、世間が驚くような作品を作って、パフォーマンスするのが人の心を動かすのだと思います。
そこの安定を図るマネジメント
とはいえ僕も一応、作曲というアートをやっている人間ですが、スケジュール管理、締め切り、営業など、作品作り以外でもやることは沢山あります。
そこに時間や気持ちを割くのはとても面倒で冷めてしまいますし、そんな気持ちでやってたら仕事も取れません。
実際の所、営業(仕事をとってくる)や、締め切りの面は事務所に管理してもらっています。
自分でも十分できてはいるのですが、特に営業(売り込み)はそれはそれで特別な能力が必要なので、自分にはとても無理です(自分の宣伝、売り込みが苦手という事)
そういう面で、事務所と二人三脚で上手くアートと仕事のバランスを取って事業として成り立たせています。
とはいえ、個人的な仲で事務所を通さずに依頼を受ける事も多々あるのですが(事務所許可は得ています)、そういう場合は大抵依頼側も個人(アーティスト)の事が多く、僕も苦手な値段交渉もしないといけないのですが、どうしてもそこが至らず事故になってしまう事が時折あります。
アーティストの恐ろしいセルフマネジメント
散々書いてきて本題はここなのですが。笑
つまり、アーティストは「能力」や「思考」がアートに全振りしている人種のはずなので、それにプラスして事務や営業などの仕事脳を使うタスクは絶対に他者に委託した方がいいのです。
そんな中、会社に縛られるのがいやで「自由に活動したい」アーティストの方も結構いらっしゃって、そういう方からご依頼を受ける事も多々あります。もちろん、ちゃんと仕事として履行できる方がほとんどなのですが(そうでもないか…)、稀な例として実際にあった危険な話を紹介します。
注:ライブ記録等で実績や記事にさせてもらっているアーティストさん等は以下の文章とは関係ありません!!!
以下の例は二度と思い出したくないので記事や実績にはしていません。
1.スケジュールがゴロゴロ変わる
「○月○日、コンサートをするので、ギターを弾いてください。」と言われたので、スケジュールを確保したものの
「やっぱり○月にします!」と変更があり、その後
「やっぱり延期にします!」とその仕事自体が無くなりました。
実際の事情は知らないですが、こういう時はたいてい察するに「本人の気分」の事が多いように思います。
スケジュールを決めた際はやる気があるが、その後どんどん気が変わり最終的には冷めてしまう。
企画の際に散々打ち合わせをして時間も使っているのに、気分でひっくり返されたらたまりません。
本人はそれによるスタッフやバンドなどへの経済的・精神的損失なんか気にする事もないんだろうな。
ここもしっかりマネジメントが入っていると、浮き沈みも加味して管理してくれますよね。
僕もここまで振り回されると、そのコンサートのために断った他の仕事があれば損失も出てしまうので、関わりたくありません。
2.ギャラをうやむやで進める
「何か曲、書いてよ!」と言われたので、僕としては「作曲の仕事の依頼」
と捉えて、曲を書き下ろしました。
その後、請求をしようとすると
「お金を取るなんて聞いていない」
「いつかタイアップが付いたらそこから制作費を支払うつもりだった」
「私の周りには後からお金と言ってくる人はいない」
「あなたの請求する○○万円は相当な地位の人の価格だ」
と、散々な目に合ってしまいました。
友人的な仲だと思って最初に費用の事や見積書を出さなかった僕にも落ち度がありますが、
友人的な仲だと思ってタダで楽曲を書いてくれると思っていた相手との思想の違いでした。
最終的に、書き下ろした曲は「仕事」としてやった事にしたくないので、一才の報酬を辞退して「ボランティア」で制作した事にしました。職業音楽家として屈辱的な出来事でした。
「お金を取るなんて聞いていない」
僕は音楽で生計を立てているのにこんな事を言われてかなりショックでした。
大の大人、しかもプロミュージシャンを動かしているのに、お金が発生しない思想ってなんなんだろう。
「いつかタイアップが付いたらそこから制作費を支払うつもりだった」
マネジメントがついていない個人でタイアップが取れるのだろうか。営業の仕事の大変さを知らないんだろうな。。
“○○になったら…”って言われて、それが実現した経験が僕にはありません。
そんな博打を打つなら、安くても権利買取の方が良いし、「今居ない誰か」じゃなくて、「依頼した人」が対価を支払うのは常識だと思います。
「私の周りにはそんな後からお金と言ってくる人はいない」
僕の回りには気軽に職人にタダで仕事を頼む人はいない。
僕は趣味で音楽をしていないので、報酬がないなら音楽をするつもりはありません。
「あなたの請求する○○万円は相当な地位の人の価格だ」
かなり安く請求したつもりでしたが、ナメられたもんです。。。
…と、結構散々な目にあってしまいましたが、これも口約束でそれぞれが都合の良いように考えて進めてしまっていたせいで起きた事故でした。アーティスト同士が専門外の話(お金)をするのはとても危険だなと改めて痛感しました。
ある程度名前のあるアーティストでも起こりうる
業界の事を知らない方やアマチュアの方ならまだしも、ある程度名前のあるアーティストでも起こり得ます。
例えば、元々は大手に所属していたとしても、マネジメントしている会社が変わったり、個人営業に変わったりすると「ガワ」が同じでも「中身」が前者のようになっている事は多々あります。
元々はしっかり会社が管理していたとしても、そこから離れた本人の思考が幼稚だと事故は容易に起こります。
でも、アーティストは厨二であるべき
散々文句を言ってしまいましたが、とはいえアーティストたるもの「世間から逸脱」しているからこそ、人に憧れられる存在なんだと思うので、ここのバランスは難しいと思います。
・仕事や連絡はきちんとできるのに、肝心の歌が壊滅的に下手くそ
・歌が最高に素晴らしいけど、性格が最悪・社会不適合者
歌や作品にはその人の「人となり」が出るので、やっぱりアーティストというのは社会の歯車にとらわれない存在であるべきだし、だからこそしっかりそれを管理できる第三者(マネジメント)がつくべきだと僕は思います。
ちゃんとした取引先は先にお金の話をしてくれる
色々あって以降、個人で受ける初めてのお取引先や、ちょっと「?」な件には先に見積書を出したり、前金をお願いするようにしました。(と言いつつまたそのうち事故っちゃうんだろうな。。。)
恐る恐る、初めて見積書を出して交渉をしたお取引先様はとても親切で、前金で提案料、完パケ後に制作料で請求してくださいと案内してくれて「あ、これが当たり前なんだ」と思いました。
「ボクは音楽家(アーティスト笑)なので!」とか調子乗って社会経験が無いのが本当に恥ずかしいです。笑
ちゃんとした方や取引先は先にお金の話から入ってくれます。
逆にいうと、先にお金の話をしてこない奴は怪しいと思うようにしたほうが良いです。
元々思ってるんですが、何故か「お金の話がしづらい」風潮が音楽業界にはあります。
以前にも記事にしてましたね。性懲りもなく繰り返しています。笑
最後に
余談ですが、トラブルがあったアーティストとの仕事がこの先決まっており、嫌だけど割り切って我慢してやろうと思っていましたが、前記のように先に書面でやりとりする事を伝えてたため定価にビビったのか?意味不明な理由で解雇してくれたので安堵しました。
そろそろ法人にしてちゃんと専門の部署を作って会社としてするべきなのかな〜と思ってきました。笑
知識がないのでどなたか教えてください!もちろん、仕事として。