音大や専門学校では「音楽を仕事にするため」「プロミュージシャンになるため」のノウハウを沢山教えてくれます。
ですが、それと同時にどうしようもない「プライド」が構築されて、それは何より現場で不要なものとなります。
「音大や専門学校を卒業して2年経ちました。今はまだ貧乏だけど来年には…いや5年後には….大きな現場に出るんだ。。。今はまだ時期じゃないだけなんだ….」と思っている貴方は特に読んでください。
学校で、たくさんの難しい理論を学んだ。
僕は音楽の専門校(学校法人ではない)を出ていますが、学校では音楽理論や聴音、ギターの先生からのレッスンやアンサンブル(バンド)の授業をたくさん受けました。
テストでは95点でも死ぬほど悔しがっていたほどです。
しかし、現場に出てから役に立ったと思う事はとても多いですが、邪魔になった事も多々ありました。
学校で学んだ音楽が古すぎる
学校の先生は「現役プロミュージシャン」とうたっていますが、現役プロだったら常任の講師はできないと思います。せいぜいたまに趣味の延長線上のライブをして生徒を集めてライブをしている程度じゃないでしょうか?それを「現役プロ」と言ったらそれまでなのかもですが。
かつて大きな現場で活躍された方もいらっしゃると思いますが、それでも20〜30年前とかなので、今の音楽や、ギターサウンドには全く対応していません。
僕が現場に出るようになって、学校で学んだ音作りやテクニックがあまり使えなかったのはこのためです。
ただ、昔の歌謡曲は「譜読み」の能力に長けていないとできなかったので、歌謡曲や演歌の仕事が時々入った時や、ジャズの仕事の時は「あぁ〜よかったな」なんて思ったりもします。
今のJpopの現場では初見の能力が必要な場面は、あまり無いです。それより、見栄え、サウンドの良さや個性(出しすぎたらNG)が重視されるように思います。(読譜能力は絶対に要ります)
なんでもかんでも「音楽的に」解決しようとする
作曲の際によく感じるのですが、僕はら専門的な理論を学んでいるので、例えば「1+1=5」なんて事も屁理屈理論に当てはめて導き出す事ができるのです。
でもそれは、「1+1=5」が理解できる人に頑張って説明して表現できるものであって、ただ音楽を楽しみたいリスナーにとっては「1+1=2」でないとダメなんです。
僕らみたいな専門的に学んだ人ほど「1+1=2」を表現する事を嫌がり、ばかにします。
本当にプロで活躍してる人は「1+1=2」をいかにカッコよく、堂々と表現、演奏する事に命をかけています。それができてこそ、「1+1=2だけども÷2して1!!」みたいな変化球が投げれるのです。
ただ音楽理論だけで説明をつけて「1+1=5でこれはモーダルインターチェンジのコードなので云々」とか言われても、聴感上変なものは変なんです。
コレはメロディにも言える事で「〇〇のコードに○◯スケールだから良い」んじゃなくて「リスナーが聴いて良いメロディ、良い歌詞だなぁ」と思ってもらえるかどうかです。
それは勉強だけで得られるものではありません。詩的な心、本質的な才能です。音楽は芸術作品ですから。それにささやかな支えを持たせるのが音楽理論です。
音楽理論→詩的な心になっては行けない
内から出るもの、心の叫び(笑)を表現するのが音楽であるので、それを裏付けて支えるのが音楽理論の役目です。
音楽理論からコードを作って曲を書いてもあまり良い結果にはならないと思います。
「あぁ〜今日の良い天気、この気持ちをメロディにしてみよう!それにコードをつけよう!」
これにコードをつける際には音楽理論を知っていればとても役に立ちます。
「Ⅱ-Vを多用してサビはラテンリズム、2拍3連を多用した曲を作ろう」
これはあなたの卒業記念作品にしかなりません。一般リスナーからしたら「なんだこのつぎはぎみたいな曲」となります。
現場の理不尽さを受け入れないといけない
自身の例ですが、作曲の際にシンプルなメロディに対して「Ⅱm7-V7-ⅡbM7-IM7」みたいなコードをつけていたのですが、クライアントに「もっとシンプルで良い」と言われて結局「Ⅳ-V7-Ⅰ」みたいになったことがあります。
たくさん勉強した僕にとったら、せっかく知っている難しいコードをたくさん使って新しい音楽をやりたかったのに、下らないシンプルな曲になってしまった。
と思っていましたが、結果的にアーティストが歌う際、変なコードが入っていると歌いづらいし、何よりアーティストは大きなステージでそれを歌うので、邪魔になるような進行を入れるより、シンプルなコードでカッコよく、リスナーに解りやすくする方が大事、という事が完成版を聴いた時に理解できました。
大きなホールやアリーナでは、複雑なコードや細かいリズムはかなり濁って響きます。
↑これは本当にちゃんと現場を経験していないとわかりません。家の中や小さなクラブやライブハウスでは決して解りません。
もし僕が意地を張って「代理7thコードが使いたいんじゃああ!!」と言っていたら、今頃貧乏な頭でっかちのミュージシャンで終わってたと思います。
「ギター講師」で終わらないようにしてください
音大や専門学校を卒業するまでに、たくさんの技術や理論を勉強するので、我々にとって一番なりやすい職業は「プロミュージシャン」ではなく「ギター講師(音楽講師)」です。学校の音楽の先生ではありません。
つまり、学校で学んだ事をただ受け売りすればある程度仕事にはなり得るかもしれません。
でもそれを「プロミュージシャン」「アーティスト」と言えるかどうかは….どう思いますか?
現場もやっておらずメジャー作品もないギターの先生に「現場のテクニックとは…」なんて言われたらどう思いますか?