「ギターだけで稼ぐ」という考えはもう古い。僕の実際の仕事の割合とともに考えます。

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プロミュージシャンになるには
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僕はギタリストの仕事をして13年経ちますが(2023年現在)、年々「専業ギタリスト」である価値がなくなっていっているように感じます。
これからギターでプロになりたいと思っている方や、音楽の道に進みたいと思っている方はもう一度その方向にまっすぐ進んでいいのか考えてみてください。

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音楽に「ギタリスト」の必要性が無くなってきている

「ループ素材」の音楽が主流になっている

僕がギターを仕事にし始めた2010年には既に顕著であったのですが、ギターを必要としている商業的な音楽が減っています。

音楽制作の現場では、ギターのサウンドを使用する場面は多いですが、Spliceなどで引っ張ってきたサンプリング素材をループで使用するような楽曲が多いです。

生でレコーディングしたギターの「ブレ」や「人間味」的なものが、現在の音楽には必要性が少なくなってきています。

ダンスミュージックやHiphop、Kpopなどは「ループ感」が気持ち良いので、ギターの良いリフ素材が一つあれば、それで1曲分の素材が事足りてしまいます。

とはいえ、日本の音楽はバンド系やアニソンでギターが目立つ場面は多いと思います。

ただ、その少なくなりつつある仕事の席は既に埋まっています。そこに新規でこれからプロを目指して参入しようとしても、既に経験値もあり席を占領している人たちから仕事を奪うのは大変だと思います。

仕事を頼む方から考えると、得体のしれない新人に一か八かで頼むより、経験値のある人に頼む方が良いですよね。

弾ける作家は自分で弾いた方が早いし安い

これも僕がプロになってからずーっと
「今回は予算が少ない」という言葉を毎回聞いているような気がします。笑

昔はそうじゃなかった時もあるんだと思うんですが、僕が仕事を始めてからはずっとこの感じです。

とはいえ、なんでもかんでも外注している余裕がない案件は多いので、楽曲制作する際は作家自身でなんでも出来た方が予算削減・時間削減になります。

そういう理由もあって、僕は作曲家として楽曲制作する時は、楽器の外注(各ミュージシャンに頼む)はほとんどせず、全ての楽器を自分で弾きます。その方が納品も早いし、予算も安くで済みます。

ギターシンセのクオリティが高くなっている

ギターのレコーディングの際、アレンジャーや作家さんからデモを送ってもらった際、仮でシンセのギターを入れてくれている事も多いのですが、これが意外とクオリティが高い。

単独で聴いてもすごいリズムが安定しているギターだなという印象で、これを自分のヨレた(人間的に、という意味)ギターに差し替える必要あるかな〜??なんて恐縮に思ってしまうくらいですw

とにかく、わざわざギタリストに発注して生ギターに差し替えなくても、ギターシンセの音でもリリースレベルに耐えうると僕は思っています。

僕の場合はギターシンセで打ち込むより弾いた方が断然早いのでそうしますが、最近の音楽、特に洋楽やKpopでは敢えてギターシンセで制作している楽曲がほとんどのように思います。

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「ギタリスト」をカッコ良く感じない

個人的な話になるのですが、そもそも僕には「憧れのギタリスト」がいません。
ひとつ、ふたつ上の世代の方とかは、バンドブーム、ギターブームの時代を生きてこられているので、世間一般的にもギターヒーロー的なスターがたくさん居たんだと思います。

僕がギターを始めた当時は2006年くらいで、そのあたりって、人気「バンド」はいても、人気「ギタリスト」というのはあまり居ませんでした。
流行っている音楽はヒップホップだったので、ギター音楽なんかよりラッパーやR&Bシンガーの方がカッコイイ、憧れの存在でありました。(名手として色々なギタリストは勿論好きでした。)
売れてるバンドと言ってもミクスチャーやパンク等のテクニカルなギターが入っていないものが主流だったので、例によってリアルタイムでカリスマギタリストはいませんでした。

もはや、「ザ・ロックです」「ザ・ギタリストです」的な風貌の人に嫌悪感すら覚えるくらいです。

例えば、高校生当時、イングヴェイがデカデカと載ったヤングギター(雑誌)を学校に持っていったら「なにその気持ち悪い人の写真」とイジられる有様でした。笑

その影響かどうかはわからないのですが、「ザ・ギター小僧」みたいな感じに今でも憧れが全くありません。

多分今の20代以下の方とかは「ギターソロって何?」と言うくらいギタリストに興味がない人が多い印象です。

その中でも「ボウイが好きです」とか言うような学生もたまにいますが(だいぶ減った)良いのか悪いのか、親御さんの影響でそうなっている人がほとんどです。

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ギターは稼げるコンテンツではなくなった(昔は稼げたらしい)

いつまで経っても成功できない

ミュージシャンあるあるで、若い頃はもやし主食の極貧生活を送っていたが、のちに成功してお金持ちになった!みたいな話ってよく聞くと思います。

諸先輩方に話を聞くと昔は貧乏だったけど、○○の仕事をきっかけに飛躍した。なんてエピソードはよくあります。

でも今はどうでしょう?30代になってもまだまだずっと貧乏なミュージシャン(志望)多くないですか?

幸い僕はそれなりに稼いでいますが、それでも予定では今の10倍くらい豪遊してる予定でした。笑

昔ほど仕事がない(ライブ・レコーディング)

2世代上の先輩方に話を聞いていると、昔は今より仕事数がとてつもなく多かったようです。
アーティストのツアーのバックバンド、レコーディングはスタジオに機材を引っ越しレベルで持ち込んだり、郊外で1週間のREC遠征もあったとか。

それが今となっては、前記しましたが、楽曲にギターの必要性が少なくなり、アーティストのツアーはカラオケ演奏でバンドはなし。
ギターのレコーディングは自宅で十分できます。さらに発注してくれる筈の作家さんが自分でギターを弾くことが多くなり専業ギタリストなんかに仕事は回ってこない。

予算がなくてもしっかりバンドを従えてツアーだ!なんて言ってるアーティストさんでも、交通費程度で若いメンバーや大学の友達とかでメンバーを揃えてボランティア同然でやってるなんて事もよくある話です。

そういう記事を書いていました。
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ギターは手軽に誰でもできるようになった。

年々、ギターを始めるハードルが低くなっていて、誰でも気軽に始めれる(続けられるとは言っていない)ようになったと思います。安い楽器でもそれなりに良い物が多いです。
それは本当に素敵な事だと思います。

だからこそ、プロギタリスト」の特別感、価値がなくなっていると思います。
だって誰にでもできるんだもん。タバコ吸える人がすごい!てならないですよね。そんなくらいまでギターは身近なものになってきたんだと思います。

ギター教室の需要は増えた。

ギターを始められるハードルが下がった分、ギター教室の需要はとても増えているはずです。
ギターを学べる音楽教室なんか一駅に1軒はあるように思いますし、実際僕がギターの講師の仕事をしていた時も、個人的な生徒や、雇われで何件か掛け持ちしてはいましたが、月に何十人も生徒さんが習いにきてくれていました。

ふた昔前は、「ギターを習う」といったら、ゴリゴリのクラシックギターの教室しかなかったらしいです。
そのためか?2世代以上上のギターの先輩方はクラシックの技術をしっかり吸収した説得力のある音を出される方が多い気がしますw

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でもさ、音楽教室の先生でいいの?稼げる?

生徒A
生徒A

じゃあギターの先生として仕事はできるじゃん

と思うかもしれません。はい。できます。

でも儲かりますかね??
思ったより儲からないです。

実際、僕がレッスンの仕事をしていた体感で、総合的に大体1コマ1時間で2,500円くらいの収入という感覚でした。(スタジオ代や教室の取り分、交通費を引いた値段)
今でも細々とレッスンはしていますが、1コマ8,000円〜10,000円のレッスン料で他より割高にしてます。
ただ、カリキュラムを用意したり、教室をいくつか掛け持ちしていたら1日に何件か移動もあったり、無断で欠席などがあるとその分収入がぶっ飛びます。
そしてレッスン自体は基本マンツーマンなので、一人につきたっぷり1時間を費やし、5人もやればクタクタです。
その後に自分アーティスト活動に費やす時間なんてありません。(疲れて寝るw)
そう考えると1時間2500円くらいの感覚よりもっと少ないかもな。バイトの時給として考えると高いのかもしれませんが、一生懸命働いても先生業だけだと一般平均的な月収に届くかどうかくらいですよね。。
噂で聞いた話ですが、1時間900円とかの時給で働いている講師の方もいるそうです。夢がないなぁ。

「ギターの先生

としてはそれで良いのかもしれませんが、それが「アーティスト」なのか「ギタリスト」なのか?と聞かれたらNoだと思います。クリエイティブではないと思う。

「僕はプロギタリストです」って言う割に土日はライブや制作もなく、狭い部屋の中で自分が専門学校で習ったギターの蘊蓄を生徒に垂れ流してるだけの人に憧れますかね?

じゃあお前はどうなんだ?

では実際僕自身が今現在どういう立ち位置でギタリストとして仕事をしているか?肌感覚を説明します。

レコーディングは安く・早く・クオリティ高く

ギターのレコーディングの仕事は、基本的に自宅でやります。エレキは当然アンプで録るし、アコギはマイク・ラインの複数系統で録れます。
多分スタジオで録るより良い音で録れます。(リラックスして録れるという意味でも)自宅で録るので移動費、出張費は要りません。ジャズで鍛えられた瞬発能力もあるので1曲録るのに1時間で済みます。

実際わざわざスタジオに呼ばれる事も少ないし(寂しい)
今年関わらせていただいていた大きいプロジェクトでも、オーケストラやドラムは大きいスタジオで録ったのですが、僕だけ自宅録音の作業でした。泣

現在ギター録音の仕事は平均週に3曲くらいのペースで受けている感じです。
値段は最近は1曲30,000円〜ですが複数曲割引や、ほんとに予算無い個人だと5,000円で受けた事もあります。

ライブはフットワーク軽く、誰にも負けない技術で

普段カラオケでライブをしているアーティストさんでも、特別な時にはバンド編成を望む場合も多いです。
ただ、予算がない時は「ピアノだけ」になります。
会場が狭い時などは「アコギだけ」になります。

コロナの影響もあってか、この「アコギだけ」の機会に呼んでいただく事が本当に多くなってきました。

ただ、この「アコギだけ」で伴奏するのって、結構スキルがいるんです。バンドの場合ドラムやベースに丸投げできるリズムや低音を賄いながら、コードや、ピアノが弾くようなイントロメロも添えないといけないからです。あとプレッシャー。笑

それに耐えうる技術があってこそ、アーティストさんに頼ってもらえます。

バンド編成だろうが、アコギだろうが、ついでに色々(コーラスとか)なんでも来いで居れてこそ今の時代に耐えうるミュージシャンであれます。

誰でもできるギターだからこそ、誰にもできない技術を持っていないと本当に生き残っていけないと思います。

ライブは個人練習をしっかりやり、リハや本番のスケジュールも抑えられるので、そんなにたくさんは入れてません。月2〜3本番くらいがベストかな。
ギャラとしては1本数万〜10万円前後です。

数千円とかのギグとか実りのないぶっつけ本番のセッションは今は受けてません。

楽曲制作は「全部自分でやる」

先にも書きましたが「予算が無い」「納期が短い」のが普通の時代です。
作詞・作曲・編曲・ギター・ベース・ピアノ・ドラム全部自分でできた方がいいです。
役割分担して新たなケミストリーを生むのも大事ですが、納期が短いとそんなことしてられません。
確固たる自分の世界観を持っていた方が早く・品質高く・安心感のある作品が作れます。

クライアント側の立場で考えても、作家一人で全部やってくれた方がリスクも少ないし、品質のブレも生まれないので頼りやすいと思います。

1曲諸々で30万円を定価にしていますが、これも予算次第です。
最近は最も安くて2万円で受けた事はあります。が流石にそういう場合はあまり手の混んだ作品ではありません。

楽曲制作は平均で月3〜4曲といったペースだと思います。

最後に

最近趣味の記事ばかり上げていたので、たまにはしっかり音楽の事を書こうと思いましたが、なんかまた愚痴っぽい感じになりました。笑

「ギターだけしかできません(やりません)」というのが、昔ならカッコよかったのかもしれませんが、今はそんなんじゃ仕事にはなりません。

今でも、素晴らしいギタリストやアーティストはどんどん出てきていますが、あくまでもギターオタクのための「すごい人ら」で、世間一般的に認知されるレベルではないと思います。

音楽家として生きていくのであれば、音楽の事はなんでもできて当たり前。
Youtubeネイティブ世代になってくると、それプラス映像、イラストetc…他もできて当たり前になってくるもかもしれませんね。

自動翻訳など便利な技術も実用レベルになってきそうな感じですが、そういう最先端の技術は嫌悪せず(音楽家は右寄りな考えの方が多いですが)どんどん取り入れて、新しい作品・もの作りに昇華していけるよう頑張っていきたいものです。

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