こちらの記事でも書きましたが、僕は元々ジャズギタリストとして活動していましたが、今はほぼそういうライブ活動はやっていません。(BGMや企業様での案件はお受けしています。)概ね以下の理由です。
- お客さんが少ない
- ギャラが少ない
- プレイヤー・ミュージシャンが昔気質の人が多い
人任せにすんな!お前の実力がないだけだろ
いやおっしゃる通りです。
勿論、そのような現場ばかりではなかったのですが、割合としてはとても多かったです。
特に純粋にジャズの演奏を披露しているステージに多かったような気がします。
日夜ジャズミュージシャンも新しいマーケットを開拓していると思うので、変なことばっかり言うと業務妨害になりますが。。比較的ファンを獲得しているジャズのライブやアーティストは、他の部分に集客ポイントがあるように思います。
- 元々は別ジャンルで成功している歌手だが、企画・チャレンジとしてジャズのコンサートもしている
- おっさん向けにアイドル的にやっている
- 大規模イベント(ジャズフェス)の抱き合わせ
などなど。
また、ギターってジャズの中では中途半端な立ち位置なんです。その理由をお話しします。
コード楽器としては中途半端、リード楽器としては弱い
例えば、ジャズシンガーがバックのミュージシャンを雇うとき、どんな基準で選ぶと思いますか?
コード楽器としてピアノは絶対必要ね。あとはドラムが入ってくれるとリズムがしっかりなるし、そうなるとベースも必要ね。ソロでアルトサックスが居てくれると華やかになるからその4人にお願いしようかしら。
はい。ギターは候補に上がりません。
ピアノにコード機能で勝てない
まず、ギターの音のレンジはピアノよりとても狭いです。サスティーンペダルも無いので音を伸ばす事も難しいです。
えーっと次のコードは、G7(b9,b13) Db7(9,#11)….いや指足りん無理
ふんふふん♪(スラスラ…ピロピロん♪)
ペダルガチョンガチョン♪(音伸び〜)
あと、ギターは左手で音を選択し、右手で弾きますが、弦が6本なのでどう頑張っても同時に6音しか出せません(7弦ギターあるだろとか屁理屈はやめろ)
でもピアノは両手で最大10音出せます。
これかなりアドバンテージありますよね。そりゃピアノを選びます。
ピアノと一緒に、ギターも入って一緒にコードを弾いたらダメなの?
それが…そう上手くいかないんです。しっかりアレンジして、棲み分けができている曲で演奏するなら大丈夫なのですが、ジャズは大半をアドリブで演奏するので、ギターとピアノは役割が被って被ってしょうがありません。
とはいえ様々な事情でギターとピアノが一緒になる場面もあります。優しいピアニストの場合は、曲によってコードの主導権をギターにくれる場合もあるのですが…
コードは僕が弾くから、あんまり弾かないでもらってもいいかな?オブリも控えめにしてくれなと、サウンドが濁っちゃうんだよね。
ていう人のこと考えてくれない奏者もいます。泣
とあるコンサートで、ベテランのピアニストにこれを言われて、完全に萎縮した僕はそのコンサート中ほぼ突っ立ってただけでした。笑
ジャズの場合は、先に書いたG7(b9,b13)とか、複雑なテンションコードを使うこともあるので、他のコード楽器の人と解釈が違うと、サウンドが濁ってしまいます。
さらに、ピアノもギターも減衰音の楽器なので、ピアノとギターをアドリブで棲み分けさせるのは、とても難しいです。
ジャズの楽曲は、キッカリしたビートより、レガート(音の伸び)を大事にした楽曲が多いので、ガシガシギターでカッティング!なんてのもできません。
例外: ビッグバンドや、ジャズといえどファンク寄りのビートをしっかり出す必要のあるバンドやコンサートの際は、ギターが好んで呼ばれます。
管楽器に対して、音色が弱い
じゃあ、コードじゃなくて間奏のソロやイントロのメロとか単音で弾いてたらいいんじゃないですか?
ソロの時はディストーションとブースター踏んで、ディレイもかけてっと。。。
なんて事はできません。
それロックじゃないですか。
そう。なぜかジャズのソロの時って音色の制限がきついんです。
ジャズギターの音色として捉えられる音は、ウォームでクリーンなフルアコの音です。
ジャズギターの音色って唯一無二ですが、やっぱサックスとかの方が良く無いですか?
やっぱりサックスとかの管楽器の方が派手でかっこいいと思います。一般的に。
ジャズのギターってちょっと地味なんですよね。それが良いとこでもあるんですけど。。
もし自分がボーカルで、バックバンドとして雇うならサックスの方がいいかなぁ。
じゃあジャズギターに活路はないの?
僕の場合ですが、以下のシチュエーションの需要が高かったです。
ジャズボーカルの伴奏で、ピアノが入れない場所での演奏で呼ばれる
ほんとはピアノトリオ(ピアノ、ベース、ドラム)がいいけど、場所的に難しいから仕方なくギタートリオにした。
とか、ライブハウスではなくカフェの小さなスペースで演奏する場合はギターの方が映える事がありますね。
え、こんなとこで演奏すんの?
ってくらい激狭な事もありますから。笑
ギターが映えるセットリスト、演奏楽曲が多い場
ジャズと言えど、ギターが映えるジャンル(フォーク、ボサノバetc)寄りの時や、あえてギターの素朴な伴奏で歌いたいとかですかねぇ。
やっぱギターってレンジが狭くて、歌う際ピッチが取りづらいらしいです。
ある大御所のボーカリストの方は「ピアノじゃなくて、ギターの伴奏で歌えるようになったら一人前」
なんて事もおっしゃってました。
フロントマンとしてやる
誰かに雇われるんじゃなくて、自分自身がフロントマンとしてバックバンドを雇う、もしくは決まったバンドを結成して活動する。
やりたい音楽性や、楽曲、自分自身がアーティストとしてやって行きたいなら全く問題ないですよね。
でも、残念ながら、僕にはそこまでジャズギタリストとしてのカリスマ性はなかったです。笑
ちなみに、オルガントリオとかどうですか?
一時期、オルガントリオの編成でのライブによく呼んでもらってり、大御所の奏者の方に鍛えてもらってました。笑
オルガントリオとは、オルガン、ギター、ドラムの3人のフォーマットで、ピアノのようにオルガンもコードやメロを弾くのですが、左手や足でベースラインも弾いて忙しいので、結構ギターの役割があるのです。
ジャズギタリストでも、この編成を好んで演奏する人も多いし、僕も大好きです。
しかも、ピアノと違いオルガンは持続音なので、減衰音のギターとの棲み分けも比較的やりやすく、先に書いたような鍵盤奏者との喧嘩になりません。笑
ハモンドのオルガンはデカいので汎用性はよくないですが、深みがあって魅力的な音色を奏でます。
汎用性を考えると、生楽器よりのシンセやキーボードで代用してもいいかもですね。
ギター同士で演奏する
これ、一番いいです。
ギターのことはギターが一番わかるんです。
ソロに加え、伴奏も好きにできる(邪魔が一切ない)ので、奏者としても演奏力を最も発揮できる編成かもしれません。
ちなみにソロギターはちょっと方向性が変わります。
一人きりで演奏をすることもありますが、ソロギターはかなり綿密に演奏内容を決めるので(ピアノで言ったら片手で演奏するようなもん)、アドリブをするにはやや犠牲にするものが多いです。
てか、そもそもジャズがやりたいのか?
僕はジャズは好きですが、いざ奏者になってみると、出だしに書いたように、想像以上にライブにお客さんが入らないし(10名くらい来てくれたら万々歳)、その上でギャラも少ないし(平均、数千円くらいかなぁ。)、正直、好きだけではやっていけないと思いました。(好きだけでやってる人ごめん)
数年前の情報ですが、”日本より韓国、中国や他のアジアのほうがジャズの音楽は盛り上がってる”と海外でも活動している方に聞きました。
「イルボンにいったら、すごいジャズミュージシャンが大勢いて、盛り上がっているんでしょうね!」と言われて何も言えなかったそうです。
はい。自分の良かった時代にあぐらをかいてる感じのベテラン奏者が時々…まぁまぁいると思います。
俺たちの時代はちょっとした演奏で、ゲー万もらってお姉チャンと遊んでたわ!
ガハハ
酒飲みながら仕事をするのを正当化する
お客様からご馳走になる事もあるので、お酒は僕も絶対拒否していたわけじゃないのでアレですが。。。確実に演奏に支障が出ている人、結構いました。そしてその酔った酒臭い息を吐きながら
お前の音にはビバップが足りへんのや。俺はニューヨークではずっとパップ漬けやった。
チャーリーパーカーから聴きなおして来い。(プ〜ン)
もうこれパワハラですよね?(チョコプラ松尾さん風)
勉強になリマス!とは言ってましたが、反面教師としてです。
こんな演奏、お客さんとしても見たくないです。
もちろん、こんな奴人ばかりではないので、本当に素晴らしい音楽を表現されているベテランをはじめプロの奏者の方もたくさんいます。ただ残念なことに同じジャンルとして同じお店やライブハウスで出演していたりするので、どうかそういう魅力的なジャズミュージシャンにもっとスポットが当たればいいなと思います。
敷居たかそうなジャズのライブバーに初めて来てみたけど、、酒ベロベロなおっさんが適当に演奏して「なんでこんな素晴らしい音楽が人に受け入れられないんだ!」って言っててもう幻滅しました。
なんて言われないようにしないとですね。
結果僕は….
やっぱり俺がやりたいの、これじゃなかった。海外に行ってまでやりたいわけじゃないし。
元々作曲家になりたかったので、横道に外れながらも、その道に行く覚悟ができたのでした。笑
結論:しっかり鍛錬しましょう
ジャズギタリストの肩身は狭いです。
でも、それを選んだのは僕であり(まぁ今はご無沙汰になっちゃいましたけど)、あなたなのですから、腐らずに活路を見出せるように頑張ってみませんか?
そしてそういうミュージシャンを是非応援してくださればとても嬉しいです。